![]() | スノーファンタジア うえだ 真由 by G-Tools |
●あらすじ●
里央は親友の陽史に密かに想いを寄せていた。だが陽史の恋人が半年間の留学に出発した日、見送りに行ったふたりは事故に遭い、陽史が記憶喪失になってしまう。彼女の存在も忘れた陽史は、親身に面倒を見てくれる里央を自分の恋人だと思い込む。ずっと叶わぬ恋だと諦めていた。でも、ひとときでも陽史の恋人になってみたい---。その気持ちに抗えず、里央は陽史のキスを受けてしまい・・・・・。罪と愛の幻想曲。
●感想●
☆スノーファンタジア(小説DEAR+掲載作品)
陽史は本当に、何も覚えていないのだ。---だから、事故当時一緒にいた里央のことを、唯一の友達として頼っている。
掴まれた指が、発火しそうに熱くなった。ずっと好きだった陽史が、ほかでもない自分のことを忘れてしまったのだと思っただけで、たまらなく寂しかった。
「また来てくれよ。えっと・・・・・・松岡・・・・・・」
「里央だよ」
最初に聞いた名前を思い出そうとしている陽史に、里央はフルネームを覚えてもらおうと言った。しかし、里央のその言葉に、陽史は全く見当違いのことを思ったらしい。
「前はそう呼んでたんだ・・・・・・?」
自然な感じで尋ねられて、里央は目を瞠る。
「・・・・・・うん」
ちくりと胸が痛んだが、里央は頷いた。唇を動かして、里央・・・・・・と新しい記憶を刻もうとしている陽史に、看護士が声をかける。
「坂口くん、疲れたでしょう。ゆっくり休んで。松岡くん、そろそろ帰ろうね」
「はい。・・・・・・坂口、また来るよ。早く元気になって」
そう言うと、陽史は苦笑した。
「里央のことは名前で呼んでいたのに、俺は名字だったんだ?」
「------・・・」
事故で記憶喪失になった陽史にずっと思いを寄せていた里央は陽史に嘘を吐き恋人の振りをする・・・。里央の気持ちはよく判るなぁ〜。狡いとかは全くなくて、多分自分が同じ状況になっても同じ事するだろうなぁと思うんですよ。健気で、でも罪悪感で一杯で。ホントに陽史が好きで、一瞬でも夢を見たいって気持ちが可哀想で可愛くて。里央が幸せになれるラストにしてください・・・って思いながら読みました。
陽史は記憶喪失って事もあって、流されてるだけって感じですね。だからあまり記憶喪失の話って好きじゃないんですけど・・・。彼の意志がないじゃないですか、里央が一生懸命な分可哀想だなって。でも途中で黎子のことを思いだしたら?と思うと、途中ハラハラしましたけど。
「あぁ。気をつけて帰れよ」
陽史のセリフを最後に、ドアが閉まり、圧力がかかった。
少しずつ速度を上げていく新幹線のドアガラスから、小さくなっていく陽史を見つめる。
あと少しで陽史が見えなくなると思った瞬間---不意に、視界がぼやけた。熱い涙が次から次へと溢れてきて、止まらなくなった。
旅行から帰ってきてしばらくすれば、陽史は自分の傍からはいなくなってしまう。かつてと同じ友達としての場所も、もうなくなるだろう。
すべてを代償にもらった三日間は、本当に楽しかった。
これで、全部終わったのだ。つらいことも、楽しいことも、何もかも。
「・・・・・・っ」
手首でぐいっと目許を擦り、里央は歯を食いしばる。
それでも、殺しきれなかった嗚咽が漏れた。胸がきつく締めつけられたように、きりきりと痛くてたまらなかった。
乱暴に涙を拭い、里央はドアガラスの向こうを見る。
冷たそうな澄んだ空気、晴れた青空。空間に線を引いたように伸びている電線と、薄い雲。------そこにはもう、ホームも陽史の姿もなく、視界に映るのはただ、どこまでも白い雪景色だった。
綺麗なお話だと思います、”8年目の約束”の時も思ったんですけど。うえだ先生の作品の特色なんだろうなぁ。綺麗というか、綺麗事。黎子が留学中で話に割り込んでこなかったり、二人だけで話が進行してるような感じで里央の感情の流れだけでストーリーが進んでいる気がして。いくら別れることが決まっていた恋人同士だったとしても、黎子なり陽史がもうちょっと感情的になったりしてもいいんじゃないのかな・・・妙にアッサリ引きすぎなんだよね。修羅場なんてこの作品に合わない気がするけど、里央に都合のいいように話が進んでる気がしちゃったんですよ。イイとか悪いんじゃなくて好みの問題だろうなあと、コレは。私的にはスパイスが足りないかな、と。
☆グリーンセレナード(書き下ろし)
”スノーファンタジア”のその後の短編です。私はこちらの方が人間臭さというか、綺麗事じゃ済まなかった里央の葛藤が現れてて好きです。絶対、里央と黎子の心には傷が残ったはずだと思いましたし、それに対して陽史がどう対応するのかも気になってました。結局、捻くれた捉え方だとは思うんですが陽史と黎子を天秤にかける結果になって里央を選んだ訳なんですが、元々黎子との関係には未来がなくどこかで終わらせなければならなかったことが黎子にとってマイナスになったってのがどうにも引っかかって。里央に対する気持ちがもの凄く黎子に対する気持ちに勝ってた・・・という確証というか、陽史の思いの強さがあまり感じられなかったんですよ。この話で里央が引け目を感じてるのは凄く理解できるし、この思いってずっと引きずるんじゃないのかな〜などと思ったりして。里央はずっと黎子に対しても負い目を負っていくんじゃないのかな・・・と。その辺りを陽史がどうやってフォローしていくのかが気になります。大事にしてあげて欲しいな、と。
幸せなんだけど、どこか切なさを感じるお話でした。私はわりと、こんな感じのドロドロしたネガティブさが好きです。スッキリ、サッパリとはいかないラストだと思います。でも、自分が傷つき誰かを傷つけたした結末の恋が全て円満なハッピーエンドの訳がないでしょ。この切なさ加減がきっと”スノーファンタジア”本編だけだと★×3だったのを★×4まで引きあげたんだと思います。
●著者の近刊●

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確かに黎子のさらっと流され過ぎですよね、陽史が未来の無いであろう彼女との関係を選んだと言うところもなんだかちょっと腑に落ちない物があったりします。
ではでは。
なんだか色々とseesaaさんがトラブル続きのようでして・・・ご迷惑をおかけしてます。もう大丈夫のようですが・・・。
わりとこういったほのぼのした雰囲気の作品って改めて感想読んでみると辛口になってる気がします・・・ごめんなさい。