![]() | 虜 -とりこ- キャラ文庫 秀 香穂里 山田 ユギ 徳間書店 2004-09-25 by G-Tools |
泣ける ★★★☆☆
切ない ★★★☆☆
エロ度 ★★★☆☆
ドキドキ★★★☆☆
満足度 ★★★★☆
切ない ★★★☆☆
エロ度 ★★★☆☆
ドキドキ★★★☆☆
満足度 ★★★★☆
●あらすじ●
藍原はクールな美貌の凄腕麻薬取締官。現在追っているのは、危険度Aの新種ドラッグと、その密売に関わる“ゼロ”と呼ばれる男だ。捜査中のある日、藍原は聞き込みに訪れた喫茶店で一人の男と出会う。精悍な容貌が目を惹く年下の男・神堂―単なる店番のはずが、どうやら裏世界にも顔が利くらしい。怪しいと思いつつ、惹かれていく藍原だが!?死線で交わす愛とSEX―ハード・アダルトラブ。
●感想●
秀先生の新刊(灼熱のハイシーズン)を買おうか・・・と思って書店で現物を見て「やっぱり止めた・・・」と。どうもイラストが苦手で尻込み
「俺?・・・・・・なんでそんなことを?」
会話の軸が奇妙にずれていくのを訝しく思っているのが、顔に出たのだろう。新堂がふっと笑い、煙草を挟んだ左手を軽く振る。
「あんたがいろいろ訊くから、そのお返しだよ。で、いくつなの」
食えない奴だなと可笑しくなった。同時に、侮れない奴だとも思う。彼が何物なのかはわからないが、駆け引きのルールを知っているのだろう。
------なにか聞きたいなら、代わりの情報を寄こせってことか。
それが自分のプロフィールだというなら、いまの段階では年齢と名前が限界だ。
「年は二十九。名前は藍原徹、仕事は公務員。これでいいか?」
「俺よりもふたつ上か。若く見えるね」
ということは、新堂は二十七歳らしい。想像していた年齢とさほどずれていなかったが、そのわりには客あしらいに長けていて、見た目とは裏腹の落ち着きぶりを備えている男だ。
「役所の奥で判子押してるのが似合いそうな顔だな」
「なんだ、それは」
「あんたみたいなのが表に出てくると役所に来た奥さん連中が騒ぐだろ。部屋のいちばん奥に押し込められて、大人しく判子を押してるほうがいいんだよ」
遠回しに顔の出来を褒められているのだとわかり、笑ってしまった。
藍原はなにやら初めから重たい暗い---何か凄い物を背負っていそうな感じでした。その彼の背負った物を知りたくて、話に引き込まれてしまいました。優秀な検挙率で人と馴れ合わない藍原は同僚からは疎まれがち。頼りになる上司の浅見と鑑定課の笹尾。二人だけが仕事上や私生活のことを話せる同僚で。藍原の生い立ちや自殺し一命を取り留めた弟のこと、彼がクスリを憎む理由は痛いくらいに切実でした。
表の顔は喫茶店の雇われマスター。初めから新堂はただ者ではない、とは感じたのだけれど私の予想では警察関係の人かなって思ったのです。頭の回転も速いし事情通・・・初めからかなり怪しかったですよ。でもどことなく幼い面も見せるのですよね、この人。
男の体を覆う肌はまだ熱を持っていて、触れるだけで感じてしまいそうだ。
だが、意識は速やかに醒め、目に映るものの正しい意味を容赦なく理性に突きつけてくる。
言葉が胸の奥から出ていかない。
どうやっても、声にすることが出来ない。
こうして見ているあいだにも、彼の左の腰にあてた指が震え出す。
ついさっきまで------一時間も前じゃない、さりとてまばたきに匹敵するぐらいの短さではなく、大切ななにかを分け合ったものだけが交わせる言葉に微笑む時間は充分にあった。
その時間を与えてくれたのが自分に意志とは無関係なところにある運命ならば、歯噛みするはかない。もし、その時間を分け与えてくれたのが彼自身ならば、やはり自分の甘さを呪うしかなかった。
間違いなく一度は信じた男だ。それだからこそ、こころがずたずたに引き裂かれていくのだ。
------どうして俺はこいつを信用したんだ?
ほんの少し前まで自分を温めていてくれた身体から伝わ熱が青い火を噴き、指先が燃え上がるような錯覚にとらわれた。
「どうして------」
「藍原さん?」
想像していたより残酷な展開でした。新堂の正体がばれたときには、嘘であって欲しい、噂はガセだよね・・・と。最終的によく藍原が新堂と浅見を許したなって。許す以前にもっと激情して自暴自棄にでもなると思ったんですよ。思ったよりすんなり・・・でもないのかもしれないけど、一緒に暮らしたり抱かれたりとよく平気でいられるなって。胃炎は悪化しなかったんでしょうか、ショック療法?罪を憎んで人を憎まず・・・ってやつなんでしょうかね。
同じような境遇で育ちながら、クスリの存在自体を憎む藍原とクスリによって母親を蔑もうとする新堂。アメリカと日本で育った違いなのでしょうか。最後まで私は新堂には共感できませんでしたけど。本当の顔が判るまではとても魅力的だったのに、どうしても彼の母親に対する復讐の仕方に納得できなかったんですよね。そのことによってどれだけの人間が犠牲になったのかを考えるとね。最後までそのことに関しては彼は反省の色を見せないしね。よく藍原が許したなって思ったくらい。そのぐらい深く彼を愛しちゃってたことなのでしょうけど・・・。藍原は結構潔い性格の人でした。裏切られたのも確かだけど、新堂に救われたのも事実で。でも弟が死ぬきっかけは浅見から買ったクスリかも知れないけど、新堂だって直接じゃないけど同じ事だと思うんだよね。私の中では考えても結局許せないなぁ〜ってなっちゃうんだけどな。
笹尾は「つらいな」の一言で絶対にイイ奴だと思ってました。「頑張れよ」とか「大変だな」なんて言葉じゃなくてね。励ますんじゃなく心中察するよって声をかけられる、大人だな〜って。イラストを見てこりゃ、三角関係はあり得ないとも(笑)
浅見に対しては、初めからイヤな感じはしてました。ただ、藍原を裏切って欲しくない・・・これ以上不幸にして欲しくないなと願ってました。浅見もここまで悪だと、もう憎む気も失せるというか、いっそ哀れですよね。警察官でないあやふやなポジションだからこそ余計に自分がしっかりしていないと保てない仕事なんだろうなと。藍原には確固とした信念とクスリ絶滅に対する熱い思いがあったから怯まず自分の道を信じて行けたのでしょうね。浅見の死にしても基本的に生き残って罪を償う形の方が好きですね。でもそうなると自然と新堂にも罪が降りかかって来ちゃうからねぇ〜。新堂に罪を償う気はないからなぁ〜。足を洗えばそれで良し!というラストにちょっと不満かな。一応ハッピーエンドの形にはなってるけど、藍原はスッキリと忘れられたり全てを許せたり出来るのかと思うと複雑。でも、そうやって悩んだり葛藤する藍原を見て新堂が自分の罪の重さを感じてくれればとも思います。
個人的に自殺した人間を身近の持つものとして、考えさせられたり共感できる部分も多かったです。死んだ人より残された者の方が辛いですよ。死人に口なし、何が悪かった?何をしてあげれば良かった?そんなことばかりを十何年経った今でも後悔します。たまたま先週の日曜日、十三回忌でした。そんなタイミングでこの作品を読んだのも何かの縁かなと思います。
bk1で買う●著者の他刊:秀 香穂里●
●著者の他刊:山田 ユギ●





ご参加お待ちしてます!