2006年02月03日

氷蝕 〜十年目に告げる愛〜(桜木 ライカ/実相寺 紫子)

4813011195氷蝕~十年目に告げる愛~
桜木 ライカ 実相寺 紫子
大洋図書 2006-01-26

by G-Tools

泣ける ★★★☆☆
笑える ★☆☆☆☆
エロ度 ★★★★★
ドキドキ★★★☆☆
満足度 ★★★☆☆

●あらすじ●

キスがへたくそな男娼の直之が本田と知り合って、今年で十年になる。本田の下の名前も知らなければ過去も知らなかったのだが、この十年ずっと一緒だった。本田に抱いて、触って、キスしてもらう。それだけで十分で、本田が自分のことをどう思っているのか、それは踏み込んではいけない領域だった。なぜなら本田は直之に客を紹介する男で、直之は本田に紹介された男と寝る男だったからだ。曖昧なふたりの関係が、この冬、大きく変化することに!?十八歳以上推奨、アダルトラブ!

●感想●

桜木ライカ先生は初めてです。前2作はカバーのオレンジ色のせいか元気でポップなイメージがしてちょっと違うかな・・・と読まず嫌いしておりました。今作は男娼が主役ということで購入。
何故、男娼が好きかというと人生投げちゃったり落ちぶれちゃった人が這い上がってきたり、本当の愛情を知って変わっていく姿が好きなんだと思うんです。元々のスタートが最低ラインから始まるので、話の展開がわりと劇的だったりとダークだったりで、不幸から抜け出して最終的に幸せを掴む昼メロな展開がGOOD。

「本田さん・・・・・・も、っと・・・・・・奥・・・・・・奥まで・・・・・・」
「直之・・・・・・なお・・・・・・」
本田の手を探り当てて、指を絡めた。抱きしめてくれなくていいから、こうやって繋いでいて。
素の自分では絶対に漏らさないような言葉を、指先にだけ込める。力強く握り返してくれる手のひらから、熱と一緒に欲望も伝わってくる。達したあとは虚しいだけ。直之は今この瞬間が一番好きだった。
ただ一人長いつきあいのある男の○○○が、体内を激しく穿つ。本田とは何度身体を繋げたか数え切れない。
それでも直之は、本田を相手に直接性欲を訴える言葉以外は伝えたことがない。
抱いて、触って、キスして欲しい。それだけで十分。
そこから先は、直之にとって踏み込んではいけない領域だった。

題材が男娼なだけに濃い展開です。↑このシーンだけでも直之は本田に本気で、嫌々ながらノせられてるフリはしつつ少なからず直之に愛情はあるのは目に見えていて。それなのに何故、この二人はお互いに本当のことを言えないんだろうと。男娼と仕事を斡旋する男という関係だけで、商品に手を出しちゃいけないルールがあるわけで無し。まずそこが疑問でしたね。そこにはきっと深い訳があるのだろうな・・・そのわけに期待を膨らませていたのですが・・・・・・。
序盤は想い合ってるのに擦れ違っている二人がもどかしく、中盤にかけて直之の義弟・昌孝が登場し本田そっちのけで話が展開し始めるとどうも雲行きが怪しくなってきて・・・。直之と義弟がドロドロして凄いことになってきてるのに、本田は全く気付かず蚊帳の外状態。出番さえない。私が勝手に主人公は直之×本田だと思っていただけで、コレは直之×昌孝の話だったのか?と疑うほど。しかもボロボロになった直之を心配しながらもすっ惚けている本田の態度と、強引にでも連れ帰らない煮えきらなさに嫌悪感が・・・このヘタレめが!

「あんたが何して暮らしてるのかなんて、とっくの昔から知ってる。父さんが興信所使って調べた」
「え・・・・・・?」
「売春なんて、最低だ・・・・・・っ」
昌孝は、部屋の隅に立ち尽くして、タンスの中を覗きこんだままだった。振り向いて直之の方を見ようともしない。
扉を押さえ込んだ腕が、それに連なる肩が震えているのに気づいて、直之の身体もまた同じように震えだした。
「父さんが隠していた報告書、偶然見つけたときのショックなんて、あんたには分かんないだろうな」
「昌孝・・・・・・」
「男とつきあってるとも書かれていた。食うために仕方なく身体売ってるだけじゃなくて、囲われてんのか」
「ちが・・・・・・」
昌孝が、静かにしゃがみ込んだ。家にあったような昔ながらのタンス。直之は以前から、一番下の引き出しに下着を入れていた。
やっぱりねと呟いた台詞が、習慣で同じ場所にしまい込んでいることなのか、中に入っている下着の種類に向けられたものなのか、直之には分からなかった。
「こんなの穿いて、腰振ってるんだ」
「ま、まさ・・・・・・」

人の不幸は蜜の味・・・直之には悪いんですけど、ゴロゴロと転がり落ちる直之の転落人生はハラハラドキドキ楽しいものでした。犯され、家出し、身体を売り、義弟に犯され・・・・・・更に更に続く不幸の数々。さて、本田ナイトはいつどうやって直之を救いに来るのか。お〜い、いつになったら来るのやら・・・。最終的に警察に捜索願を出そうか・・・なんて、自分の足で死に物狂いで探すぐらいのことはしないのか、アンタは!全てあなたの優柔不断が原因じゃないか〜!!10年間一体何をしていたんだろう、この人は。ホントに出会った頃、直之に怯えが残っていた頃にちゃんとしてあげれば良かったのにね。いつか泣きついてくるのを待って10年・・・って、どうよ?これが本田が直之に本音を漏らさない理由なの?
昌孝は苦手なタイプでした。嘘を吐く人は駄目ですね。しかもイイヒトを装って、本当の直之の仕事を知ってて、知らないフリをして嘘を吐く直之を蔑んでいる・・・最低。直之の嘘はいい嘘で、昌孝の嘘は許せない嘘。私自身がこういった人を騙す嘘にトラウマがあるので、余計に許せないですね。昌孝が直之に兄以上の感情を抱いていたことはわかるのだけれど、弟なら直之が全てを捨てなければならなかった気持ちも理解してあげればいいのに。彼の年齢や、信じていた兄の嘘に裏切られた気持ちを考えると仕方ないのかも知れませんが。
でも、再会した当初から直之が難しいことだけど正直に話をしていれば、昌孝もここまで強攻策には出なかったんだろうと。昌孝が怒った理由は、直之や両親がいつまでも子供扱いして自分だけが真実を知らなかったことに対してみたいですから。直之の中ではいつまでも昌孝は別れた7歳の子供のままで真実を告げてくれないことに怒っていたと。直之にしてみれば、家出の理由もその後の人生もとても笑って話せるものじゃないことぐらい冷静になれば昌孝にも理解できたんでしょうが・・・。
結局、この二人の煮えきらなさが直之を精神的に追いつめていって、そのあと更に直之はボロボロになっていくのです・・・。余りにも可哀想で病院で目醒めた直之が記憶喪失にでもなってれば辛いこともすべて忘れらるのに、本田の事なんて忘れてやれ!と思ったほど。そして最後まで甲斐性のない、本田・・・・・・。鴇沢を伝書鳩にするのやめなさいって、大事なことはちゃんと自分の口で言わなくちゃ。弱ってる直之につけ込んだってイイじゃないですか、一言男らしく「好きだ、俺の所に来い」って言って欲しかったなぁ、直之のために。そんなことも言えずに会うのも躊躇ったりするから、直之また脱走するし・・・昌孝がついていなかったら、今頃南の島か再び消息不明だってば。
もう男娼をやめたいと思い悩む直之に本田がもっと親身になって気遣ってやればよかったのに、変な意地やプライドを捨てて。私が思うヘタレと皆さんが思うヘタレってきっと違うと思うのですけど・・・。私の中では本田はヘタレ中のヘタレ、きっと今まで読んだBLの中で最強のヘタレ!若い子のヘタレは可愛いと思うんですけど、この年でここまで大人げない奴って最低だと。いっそ本田が冷徹で容赦ない男だったらこのストーリーは成り立ったと思うのですよ。あらすじにある「本田が自分のことをどう思っているのか、それは踏み込んではいけない領域だった」まず、そこが理解できないんですよね。どう見ても初めから想い合ってる二人がここまで本音を言えないほどの事情が理解できなかったんですよ。直之は出会ったときが18歳で、当初から既に大人の男だった本田に縋り捨てられないように顔色を窺うのも理解できます。でもね、本田はこの時26歳で、36歳の今まで何を考え何をしていたのか理解できないんですよね。直之に対して本田がどうしたかったのかが。仕事を斡旋してたくらいだから独占欲は薄かったのかも知れませんが、でもそれならなぜ弟にだけはライバル心を見せるのか。本田さえこんなキャラじゃなかったら、もっと面白くなった話だと思うのがとても残念。直之と昌孝の関係や絡みは許せない部分もあるけれど、小説としては面白かったし。何より直之自体の話やキャラは不幸満載でワクワクさせて貰いましたし。小説だからこそ絶対普段ありえないことを読みたいと思うし、そういった好奇心などは満足でした。昔、山口智子さん演じてた主人公がドンドン不幸に落ちてくドラマがあってそれを彷彿させるような雰囲気がありました。「ジェットコースター・サスペンス」とかサブタイトルがついてたの。ただ王子様が腰が重くて、お姫様が腕に飛び込んでくるのを待ってるだけ・・・と言う不甲斐なさがバッド(下向き矢印)終わりよければ全て良し・・・とは思えなかったですねぇ。せめて病室に毎日顔出すことぐらいの愛情は見せてよね。

ps.
そう言えば・・・・・・と思い出してSHYのHPへ。確か短編があったはず・・・。
これだけ読むと本田はとても好みのいい男なのになぁ〜。初々しい直之が可愛いです。このあと、発作を起こしたようになる直之・・・その辺りまで読みたいと思うのは贅沢?







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アンケートに頂いたコメントより
●ウリ設定好きなので。挿絵も綺麗でした。
●ドラマチック。イラストととっても合ってます
posted by 櫻井サクラ at 10:52| Comment(4) | TrackBack(2) | BLノベルス:著者さ行 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
サクラさんこんにちは〜
エントリーかぶったので久々にTBさせていただきました。

サクラさんもやっぱり本田甲斐性なし!と思いました?
もう、私は本当にすごく苛立ちを通り越して怒りに近い感情が(^^;)

なんでもっとこうねぇ直之のことを大切にしてあげなかったんだろう彼…?
売りやらせるのが嫌なら嫌って言えば良かったのに…とか色々思いましたよ。
はらはらどきどきの展開でお話自体はすごく好きなんですよね、本田がね(笑)
大丈夫かなこの人ってとりあえずハッピーエンドになった今でも思ってます

長いコメントごめんなさい
ではでは!!
Posted by Jura at 2006年02月03日 13:51
Juraさん、こんにちは。
コメント、TBありがとうございます。

もしかして、本田さんはそんなんじゃないのよ!とお叱りコメントが来るかも・・・とビビってました。
容赦なくコケ下ろしたので、良かった〜(*^_^*)

実は昨日の「ヘタレ男カタログ」も本田のヘタレっぷりを書きたいが為の前フリなのでした・・・・・・。そう歳と身体だけ大人で、精神的幼児!アレは本田のことなのですよ〜。

Posted by 櫻井サクラ at 2006年02月03日 14:14
サクラさんへ

なんか、どこのサイトさまを拝見しても本田が「ヘタレ!」とこきおろされているのは気のせい?(笑)

私は大の大人の男が妙なトコでヘタレてるのがツボなので、むしろ美味しく頂いたクチです(え?)

でもサクラさんもおっしゃっていたとおり「男娼」っていう時代がかった存在が妙に輝いていた作品だったと思います。

TB頂いて帰りますねv
Posted by suzuya at 2006年02月03日 19:19
suzuyaさん、こんばんは。
コメントありがとうございます。

なんだか、この作品『雪舞うススキノの男娼』・・・昼メロ・チックなところがとても好きです。
何となく現代なんだけど、ノスタルジックな感じがします。
鴇沢のバーとか、和久井の怪しげな館とか・・・。

本田のことは苛めてますが、作品的には好みなのですよ、本当は。

また、遊びに来てくださいね!

Posted by 櫻井サクラ at 2006年02月03日 20:06
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