2006年01月28日

執事の特権(榎田 尤利/佐々木 久美子)

4813011179執事の特権
榎田 尤利 佐々木 久美子
大洋図書 2006-01-26

by G-Tools

泣ける ★★★★☆
笑える ★★★★☆
エロ度 ★★☆☆☆
ほのぼの★★★★☆
満足度 ★★★★★

●あらすじ●

「この仕事に必要なものは忍耐と経験、幅広い知識、そして寛容と自己犠牲です」
業界最大手の乃木坂製薬の営業職の面接に出向いた仁は、なぜか27人目の特別秘書候補として、執事である富益の執事教育を受けながら、乃木坂製薬経営企画室本部別室室長であり、創始者の孫である乙矢の住む屋敷で暮らすことになっていた。眠っているときの乙矢は美貌の貴公子さながらだが、現実は人に影を踏まれるのも嫌いな潔癖性で人間嫌いで毒舌家でわがままでひとりよがりで神経質な男で、仁はまるでバイ菌扱いを受けるはめに!バトラー・ラブ登場!!

●感想●

秘書、執事・・・イメージするのは繊細で怜悧で頭がキレて眼鏡をかけてて、どちらかといえば女王様受タイプ?タイトルからしてそんな執事と我が儘で傲慢なお坊ちゃん攻を想像してました、よくあるパターンですね。
ところが、執事候補は体育会系。えぇっ!っとまずビックリ、更に乙矢様が凄い・・・この氷の女王が心を溶かすことがあるのかと。どうなるの?と思ったときにはもう引き込まれてましたね。

「まず、乙矢様は大変毒舌家でいらっしゃいます」
「毒舌・・・・・・口が悪いということでしょうか」
「さようですな。そしていかんせんわがままな方です」
「はあ」
「さらに気分屋です」
「はあ」
「加えてひとりよがりで神経質です」
あの、と仁は遠慮がちに一度口を挟む。
「こんなことを言うのはなんですが・・・・・・それではいいところがひとつもないような」
「そんなことはございませんよ。姿形は大変よく、見目麗しい方でございます」
乙矢とやらが何歳のオッサンなのかは知らないが、男が見目麗しくても仕方ないだろう・・・・・・というセリフは呑み込んでおいたものの、仁の不安は次第に増していった。
「そしてここが一番大切なのですが」
「まだあるんですか」
ちょっと嫌になってきた。
「あるのです。心してお聞きください原田さん。旦那様には・・・・・・乙矢様には決して触れてはなりません」
「・・・・・・はい?」
身体をやや折って聞き返す。決して開けてはならないのが玉手箱。決して見てはならないのは鶴の機織り。では上司に触れるのはなぜNGなのだ。
「旦那様は潔癖性なのです」

↑これだけ読むといいとこなんて見た目だけ?って感じですが、決して暴君ではなく逆に周りのことを凄く見て気にした上での彼なりに意味のある行動なんです。仁の視点中心で話が進むのですが、時折乙矢の心情が挟まれている事により彼の心の傷や葛藤がわかり、乙矢に対する印象が段々と変わっていくのです。だから乙矢が仁にどんな理不尽な仕打ちをしても許せてしまうんですよ。
仁にしても、だた言うことを聞くだけのイイヒトでなく、彼なりにやるべき事はやった上で辞める決意のもと仕事をこなしていくのです。乙矢を心の中で三歳児以下と罵りながらも、彼の異常行動にやがてその裏事情が気になってしまう。彼が異常に気にするのは手が触れることなんです、特に相手が自分を触ること。汚い自分に触らないで欲しいと言うこと。潔癖性と呼ぶには矛盾する彼の行動に仁が次第に気付き、乙矢のことをもっと知って理解しようとするのです。この辺りはちょっと重く哀しく涙を誘います。

「くすぐったい・・・・・・」
「すいません。もう離したほうがいいでしょうか」
「・・・・・・まだ、大丈夫だけれど・・・・・・」
「嫌じゃありませんか?」
平気だ、と小さな返事。今乙矢はどんな顔をしているのだろうか。
「怖くありませんか?」
無言で頷く。その動きにより、仁の指先が乙矢の髪に潜る。そのまま髪を梳いてみたい誘惑と闘うのに苦労した。さらさとして、さぞ心地よいだろう。
触りたい。もっと触りたい。
髪にも、肌にも------。できれば手袋などせずに。
どうして自分はこの人に、こんなにも触りたいと思うのか。単に、触るなと言い続けられた反作用なのか。それとも何か別の理由があるのか。
それが知りたくて、目を開けてみた。
乙矢の顔が見える。その瞬間、鼓動が撥ねる。
ほのかに青い瞼、震えている長い睫------彼は目を閉じていた。頬を赤らめ、唇を薄く開け、眉を僅かに寄せたその顔は、まるで羞恥と快楽に耐えているかのようだ。
コクンと白い喉仏が上下する。
目が離せない。これほど美しい人が、なぜ自らを汚いと思うのだろうか。

徐々に乙矢と仁の距離が縮まっていって、仁もある事件の後怯む乙矢を叱咤し背中を押したりして二人の関係がとても良くなっていくのです。
「されたくないことは言ってください」って言質を取る仁も狡いなぁ〜。だって乙矢、何をされるのかが全くわかってないのに何を言えるってんですか〜。確信犯ですね、コレは。こっそり笑ってしまっている仁に、菜箸で鼻を挟んだときの悪戯心と同じ子供っぽさを感じて、仁も仁なりにこの関係のご褒美を味わっている様が面白かったです。
でも、ホントにラストの乙矢は可愛すぎです。ヤバイくらい可愛いです。もしかしたらH無しで終わるかな、それでもいいか〜とオマケぐらいにしか思っていなかったのですよ。でも、ちゃんと楽しませてくれたし、こんなとこまで負けず嫌いを発揮する乙矢と下手に出ているようでちゃんと操ってる仁。富益の教育の賜でしょうか。富益は初めから仁の嗜好を知っていたんだろうなぁ〜と思いません?あれだけ詳細に仁の身辺を知っていたんだから、その辺りの情報もしっかり握っていたんだろうと。ホントに陰の立て役者と言いましょうか、上手く二人ともノセられちゃった感はありますよね。乙矢が危険な目に遭うのも予想して、秘書兼ボディーガードとしても仁を選んだんだろうなぁ。
執事の特権・・・・・・富益からは唯一主人に苦言することを許され、乙矢からは特権という名のご褒美を貰う。最初は違和感のあった仁の執事も読み終わってみればピッタリの適職に。
榎田先生の作品って完成度が高いんですよね、小説としての。いつも思うんだけど、BLだけのジャンルで評価されるの勿体ない気がするんですよ。ちゃんと起承転結がしっかりしてて、笑いもあって泣かせて考えさせる。当たり前のことなんだけど、ちゃんと話になっていない作品もあるじゃないですか。でも、コレは1冊の中にギュッて詰まってる感じ。読み応えがあって、確かに続編が出るといいなぁ〜と思うんだけども、この1冊だけでも充分楽しめた上での話で。大変満足できる一冊でした!







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アンケートに頂いたコメントより
●楽しく読んで最後にじわーっと来るお話でした
●こんな執事なら、私も欲しいわ。だんだんと心を溶かしていく乙矢室長の丹念な描写に、のめり込みました。
●榎田さんにはいつもヤラレタ〜と思うのですが、この作品にも脱帽です。
posted by 櫻井サクラ at 13:47| Comment(2) | TrackBack(4) | ●榎田 尤利 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは。
TBありがとうございます。お返しさせていただきました。

ラストのHはきっとあると思っていました。仁が乙矢の手荒れを心配してクリームを置いていったところです。きっとその用途しかない、と思ってしまった私は、BL界にすっかり毒されているもようです(笑)

体育会系執事という耳慣れないキャラでしたけど、読み終わってみると、この主人にしてこの執事あり、というくらいぴったりでした。面白かったです。
Posted by 秋月 at 2006年01月29日 16:09
秋月さん、コメントありがとうございます。

その時点でクリームの用途には全く気付きませんでした・・・。まだまだ修行不足だなぁ〜と(Q_Q)↓

ホントに攻と受のバランスは絶妙でしたね。私にとっても大好きな一冊となった作品です。
Posted by 櫻井サクラ at 2006年01月30日 10:44
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