2005年12月20日

吐息まで罪の色(柊平 ハルモ/笹生 コーイチ)

吐息まで罪の色
柊平 ハルモ著

●あらすじ●

男娼の海は、突然、経済ヤクザの章博の愛人になるよう命じられる。海が、彼が探し続けている行方不明の恋人・陽海にそっくりなのだという。「少しずつ濡らしてあげよう」辛い行為しか知らなかった海に与えられる、甘い愛撫。一途に恋人を求める章博の熱に揺さぶられながら海は思う、身代わりでもいい、この温もりに包まれるのなら。いっそ、自分が陽海ならよかったのに、と・・・・・・。すべてを失っても、この想いだけ残ればいい------狂おしいまでに求める、ただ一つの愛。

●感想●
男娼、経済ヤクザ、身代わり・・・・・・あらすじの萌ワードに惹かれ、またまた積み上がってしまった新刊の山から選んだ一冊。でもここ最近”もの凄くよかった!”と★×5をつけられる作品に出会えないのが寂しいなぁ。この新刊の山の中に一つでも多く残り少ない日々をハッピーにさせてくれる作品がありますように・・・・・・。

「体が私によく見えるよう、立ちなさい」
まるで海を検分するかのような章博の言葉にも、海は逆らえない。両腕を体の横に垂らし、全身を章博の前にさらけ出す。
章博は、そのほっそりとした太股の内側を見つめ、目を開いた。
「・・・・・・これは・・・・・・」
章博は食い入るように、滑らかな太股の付け根を見つめる。白い肌の中でひときわ目立つ、黒いほくろを。
「ここにも、ほくろがあるな」
彼の声は、震えていた。
「本当に、君の名前は花園海なのか」
「そうだよ」
「嘘だ・・・・・・」
両膝をフローリングについた章博は、海を見上げた。冷めた瞳には光が灯っている。その光はどんどん輝きを増していく。激しい熱さえも感じる、何かの感情が章博の瞳を輝かせているのだと、海は気づいた。
「二年も離れていたから、怒っているのか?陽海」
戸惑いを浮かべたまま、海は章博を見下ろした。この人は、一体何を言っているのだろう?

出逢いは陽海が16歳の時。親と喧嘩をして恋人の章博の元に逃げ込んだ陽海。ちゃんと連絡を入れたにもかかわらず、両親の通報で未成年者略取と誘拐罪で章博が連行されてしまう。その後、章博が留置所から出た時には陽海は消えていて・・・・・・。2年後、陽海を探し出した章博だが彼は男娼となり自分を海と名乗り、章博のことを知らないと言う。彼は記憶喪失なのか、別人なのか-----。
同じ顔、2ヶ所の共通のホクロ。私も海が陽海と同一人物だと思っていまして・・・というかそうであって欲しいと願ってました。経済ヤクザとなってしまった章博。確かに未成年者略取と誘拐罪、しかも相手は少年となれば職も追われ、家族を捨てなければならないのも仕方ないかと。でも章博は初めから陽海を憎んだり後悔することなく、陽海に逢いたいがためだけに彼を捜し続けてて。喩えそれで自分の立場を追い込み、この世界から足を洗えなくなる状況だとしても。純愛といいましょうか、もの凄い執着心です。でも、陽海と再会してからの章博が彼に安らぎを求めているところを見ると、必然というか章博の相手が陽海でならなければならない理由がわかる気がします。
でも、陽海と正反対の海。顔形は同じなのに、自分を痛めつけるような言動をする海。初めは陽海との違いに戸惑う章博も、一生懸命章博のために陽海になろうとする海に愛情を抱くようになり陽海と海の二人の間で迷うようになるのです。陽海に逢いたいけれど、海も放って置けないと。

章博は海の小さい肩へと顔を埋めた。
かつて、章博は陽海に味噌汁の作り方を教えたことがある・・・・・・------彼がきちんと味噌汁を作れた日に、章博と陽海は引き離された。
「・・・・・・どこにも行くな・・・・・・」
腕の中の存在を失わないように、章博は力を込めた。必死だった。『彼』を失いたくない、ただその一心だった。
驚いたように立ち尽くしていた海は、やがて、そっと章博の背中に腕を伸ばしてきた。
「・・・・・・どこにも行かないよ」
優しい声だ。
どうして、これほど似ている人間なのに、彼は違う名前を名乗るのだろう。
どう見ても、陽海でしかないのに。
------・・・・・・陽海であればいい。
章博は、祈るように目を伏せた。
何かの事情で、陽海が他人を名乗っていたのであってほしい。どんな形であれ、彼が手元に帰ってきたのであれば。
たとえ海が何かの事情で嘘をついているにしても、記憶に障害があるにしても、彼が陽海であるかぎり、章博はやり直せると・・・・・・------あの安らぎとぬくもりを必ず取り戻すことができると、信じていた。

海も次第に章博に心を開いていき、身代わりに抱かれることに苦痛を感じるようになるのです。やがて章博を思う気持ちが彼に一番の望み”陽海に逢いたい”を叶えてあげたいと。その願いが叶って、突然、海の意識が陽海に変わるのですが2年間の間に海がしてきたことに嫌悪を抱く陽海。
カウンセリングを受けながらも、章博の中に海の影を見るたび不安になる陽海。海も陽海も同じ人間の中に存在するのに、それぞれ嫉妬し、でも二人とも章博を思う気持ちだけは純粋で。海も陽海の気持ちも凄くわかるし、章博の二人とも好きな気持ちも。上手くいかないそれぞれの思いが切なくて。
脇なんですが小城はホントは章博のことは本気なんじゃないかな。小城って完全ネコだよな〜と思いつつ、田所に気がある素振りで本命はこっちでしょ。でも小城に本気出されたら陽海、勝てないかもよ?章博の気持ちは絶対揺るがないとしても、陽海はグラグラ不安で堪らなくなっちゃいそうですよね。小城×田所でもOKですけど。駄目医者だと思ってた田所がまともだったのは驚きでしたけど。上手く小城に丸め込まれたんだろうな、と。それか丸め込まれた振りをしてるかもね、と。
プラチナ文庫のHPにてこの後の二人のショートストーリーが読めますよ。ちょっと可哀想に消えてしまった海が気になった方、必見ですよ。でもやっぱりこれを読んでも、この話は悲恋のような悲しげなハッピーエンドですよね。陽海が20になるまで、箱庭の今後二年間は果たして蜜月なのだろうかと。二人だけで誰にも邪魔されず、家族も捨てて世間から身を隠しお互いがいればそれでいい・・・・・・何とも言い難いですね。それぞれ幸せの形があって、彼らにはこれがきっと一番の幸せなのだと。こういった愛の形も有りなんだな、と思わせる作品でした。







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posted by 櫻井サクラ at 12:38| Comment(4) | TrackBack(1) | ●柊平 ハルモ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
こんにちは〜
これ今日読み終わったのですけど、泣きました〜
もう海があまりにも健気で。
柊平さんの作品はこれが初めてなんですけど、南下こう受けが健気で切ない感じの話が多そうですね。

プラチナのHPの番外編を読んでもまだちょっと納得できない気持ちでいっぱいです(T-T)

TBさせていただきました
では!
Posted by Jura at 2006年05月12日 18:09
おはようございます、Juraさん!
TB、コメントありがとうございます。

先日のWeb拍手、Juraさんかな?
ブログ上部の画像崩れが直りましたね!って。
どうもヘッダーに指定すると駄目みたいです。

プラチナのHPの番外編・・・そういえば読んだかなぁ〜と思い、覗いてきました。
ヤッパリ、ちょっと涙(; ;)
誰も何も悪くないのになぁ---切ない。
この後、悩む陽海でもう一冊続編がイケるんじゃないかって思いません?

Posted by 櫻井サクラ at 2006年05月13日 10:19
こんばんは、今度はTB上手くいったみたいで良かったです。
今まで使っていたスクリプト対応のスパムフィルターがSeesaaBlogに対する不具合があったみたいだというのを今日別のBlogで発見しまして

昨日新しいBlogスクリプトに変えた(といってもスクリプトを作った方は同じなのですが)時にスパムフィルターも別のものに変えたのでもしかしたら上手くいくかもとご連絡差し上げました、ご迷惑おかけしてすいませんでした。

>この後、悩む陽海でもう一冊続編がイケるんじゃないかって思いません?

いけそうですね、もう少しすっきりした終わり方は無いのかとも考えますけど。やっぱりあれがベストなのかな。

早く両親にも納得してもらって本当の幸せ掴んでほしい二人です。

ではでは!
Posted by Jura at 2006年05月23日 00:18
こんにちは、Juraさん!
無事届いたようで、一安心。
よかったです〜(^_^)b
Posted by 櫻井サクラ at 2006年05月23日 12:50
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[詞]吐息まで罪の色/柊平ハルモ
Excerpt: ―― 罰してほしい心ごと躯ごと……。初柊平作品です、柊平で「くいびら」なんですね、一発変換してくれないよ、また単語登録文字が増えちゃいますね。本当はこれの前にももう一つ別の作品を買っていたのですが、こ...
Weblog: kotonone::詞の音
Tracked: 2006-05-12 18:02